ボールウォッチはどんな時計? BALLを簡単評価解説 【ヤマトヤ】

2022.01.21
唐突ですが、皆様は腕時計にどんな性能をお求めですか?
ステータスとしての意味は勿論ですが…
①着用場面を選ばない「汎用性」
②仕事用として割り切った「機能性」
③優れた「コストパフォーマンス」
いずれも重要な要素ですが、数ある時計ブランドの中でも「初心者向き」として紹介されることの多いボールウォッチ。

このサイトでは、なぜボールウォッチが初心者向きとされるのか、その要因を一つの記事にまとめてお話いたします。

目次

「ボールウォッチ」とは


現代における高精度の代名詞がスイスのクロノメーターであるならば、スイスに先んじて工業化に成功していた当時のアメリカでは、オフィシャルレールロードウォッチが高精度の代名詞とされていました。
これは、鉄道時計が高精度時計となるきっかけのお話です。

1981年4月19日、オハイオ州キプトンにて列車同士の衝突事故が発生、9名の犠牲者を出したこの事故は、「キプトンの悲劇」の名で鉄道史に大きな爪痕を残すこととなりました。
事故原因は、鉄道事業に携わる全員が不正確で、個々に認識の異なる時刻をもとに単線を走る列車の運行を行っていたことにありました。

この事故の調査を委任された人物こそ、当時クリーブランドの時計師であったボールウォッチ創業者ウェブスター・クレイ・ボール氏です。
彼は事故の全貌を明らかにした後、鉄道標準時計の基準と時計検査システムを制定し、ボールウォッチカンパニーを企業。
鉄道員に「正確な時間」を提供すべく尽力しました。

鉄道員の過酷な労働環境にも耐えうる耐衝撃性・視認性・高精度を備えた時計を造り続け「あらゆる過酷な環境下で正確に時を刻む」というブランドモットーは現在でも継承されており、全てのモデルに印字された「RR」の紋章はボールウォッチの原点たる「レールロード」を意味しています。

モデルバリエーション7選

ボールウォッチは日本で7つのシリーズを展開しています。

①【エンジニアハイドロカーボン】

ブランド理念である「タフ&ディペンダブル」を具現化するために誕生し、BALL独自の特許技術と先進のテクノロジーを詰め込んだ基幹シリーズ
全シリーズの中でも、ひときわ強靭に作られたモデルと言えます。

②【エンジニア】

耐衝撃性と耐磁性こそが、現代の実用時計に必要な要素であるとBALLは考えます。
エンジニアは、この2つの性能を兼ね備え、特殊な耐磁シールドを採用するなど耐磁性に優れたモデルを取り揃えています。
「エレガント&カジュアル」をコンセプトにデザインし、あらゆるシーンで活躍するスタイルが魅了です。

③【エンジニアマスター】

エンジニアマスターは、ダイバーズや特殊機能を搭載したスポーツモデルをラインアップし、プロアスリートの着用を前提に開発されたシリーズです。
そのため、回転ベゼル・クロノグラフ・プッシュボタンに至るまで優れた操作性を追求し、高い視認性を有しています。
比較的大きなサイズのモデルなので腕元で無骨で屈強な存在感を放ちます。

④【エンジニアM】

エンジニアMは、約80時間のロングパワーリザーブを搭載し、スイス公式クロノメーター検定協会(COSC)の認定を取得した、ブランド初となる自社開発ムーブメントを搭載したシリーズです。
国内メーカーの機械式では約40時間前後が一般的な事を考えると、80時間のパワーリザーブは大変実用的です。

⑤【ロードマスター】

鉄道のインフラを整備・担当する「保線夫」という名のロードマスターは、ケースとブレスが一体化しているようなデザインが特徴で、BALL独自開発のワールドタイム・クロノグラフ・GMTなど、複雑構造のムーブメント搭載機を多数ラインアップししたシリーズです。

⑥【トレインマスター】

19世紀からアメリカ公式標準鉄道時計として、採用さてきた伝統的なでクラシカルな意匠を今なお継承するシリーズです。
アラビヤインデックスや、文字板素材にコールド・エナメルを採用するなどブランドへのヘリテージが凝縮され、シースルーバックからはムーブメントを鑑賞することができます。

⑦【ストークマン】

蒸気機関車のボイラーの火を管理する「補助助手」の意味を持つストークマン。
ミニマルなデザインと機能性を基調とし、視認性・耐衝撃性・100M防水など実用時計としてのスペックを有する一方、スリムなケースフォルムがスタイリッシュな印象を引き立てるシリーズ。

耐衝撃性

ボールウォッチの時計は、そのすべてが「耐衝撃時計」に分類されます。

耐衝撃時計とは水平な硬い木の面に 1mの高さからの自由落下に耐える性能をもつ時計でなければならないと定義されており、数値にすると「5,000Gs」と表記されます。

多くのモデルは上記の5,000Gsに分類される一方、エンジニアハイドロカーボンは、よりハードに1.5mの高さでテストを行い、最大7,500Gsの衝撃に耐えうるモデルでラインアップれています。

耐磁性

機械化が進み切った現代において、「磁気帯び」を原因とする精度不良や故障は、今や最もメジャーなトラブルの1つとなっています。

ボールウォッチでは「ファラデーゲージ」と呼ばれる最もベターな耐磁処理を行っています。
これは、内部の機械を丸ごと耐磁性のあるゲージで覆ってしまう方法で、積極的に磁気を吸収し、素早く放出するものです。

素材に透磁率の高い軟鉄やミューメタルを採用し、「耐磁インナーケース」を形成しファラデーゲージを実現しています。
1例として、スマートフォンは22,400A/mの磁気を持っていますが、ボールウォッチの時計は最大で80,000A/mの耐磁性を備えています。
※耐磁性はモデルにより異なります。

防水性

すべてのモデルが日常生活で十分な防水性を備えています。
最も低い数値で50M防水、最高では3,000M防水のモデルも展開されています。
日常使いに向いたスタンダードモデルでも100M防水が備わっているものがほとんどです。

ダイバーモデルは、チタンの塊からバックケースの存在しないワンピースケースを削り出し、十分な厚みのサファイアガラス風防を取り付け、プロフェッショナルの声に対応すべく、自動減圧バルブを搭載するなど、いずれのモデルも十二分な備えが施されています。

視認性

ボールウォッチはインデックスに自発光マイクロガスライトと呼ばれる特許技術を使用しており、暗夜での視認性を十二分確保しています。

蓄光塗料とは異なり、これは24時間365日常に光を放ち続ける特徴を持っており、おおよそ10~15年程持続します。

ここで気を付けたいポイントが「T25」表記の有無です。
マイクロガスライトには「トリチウム」が使用されており、製品使用上限は国ごとに定められています。
日本では25マイクロキューリー以下と定められる一方、海外では日本の規格を超えたモデルも存在しています。

そして日本の規格を超えた製品については、国内でオーバーホール等のメンテナンス行為は一切行えません。
旅行先やネットで購入する際は、事前に確認しておくことをお勧めします。

精度

現在ボールウォッチでは、スイスの著名な精度検定を通過したモデルとボール規格で調整されたモデルの2種類が存在しており、大部分は前者のスイス公式検定を通過させたモデルでラインナップされています。

この公式検定とは、現代における高精度の証とされるスイスCOSC認定クロノメーター検定であり、厳しい規格で精度の見定めが行われます。

検定は恒温状態を保ちながら15日間、3温度、5姿勢で行われ、日差が-4秒から+6秒以内に収まっていることが条件とされ、「クロノメーター」の称号を得て出荷されるムーブメントは非常に少ないとされています。

テクノロジー

耐衝撃時計を手掛けるボールウォッチは、多くのモデルに独自の技術を搭載しています。
中でも、主要な機能・装備をいくつかご紹介いたします。

【スプリングロック耐震システム】
衝撃時の精度を安定させる耐震システム。
時計の「精度」をつかさどる調速機構のうち、最もダメージを受けやすいのヒゲゼンマイ。
コレの変形や絡みは、時計にとって致命傷となるため、ヒゲゼンマイをカバーするようにバンパーを配することで、衝撃を受けた際に起こるヒゲゼンマイの過剰な変形を防ぐ役割を持ちます。


【スプリングシール】
可動部分=ウィークポイントの強化。
機械式時計の調速機構の1つである緩急針は、本来技術者が修理やメンテナンスの際に、+または-に針を動かすことでヒゲゼンマイの長さを調整し、テンプの速度の微調整を行ないます。
コレは外部からの衝撃や微細な振動が緩急針に影響し精度不良をまねかないよう緩急針を固定する役割を持ちます。

【セーフティーロック・クラウンシステム】
外部に露出したウィークポイントのカバー。
任意の操作を行うリューズは、一直線に時計の中心まで繋がっています。
言い換えればリューズに衝撃が加わると、そのダメージはダイレクトにムーブメント内部に届いてしまうのです。
コレは落下時や衝突時に上記のようなケースを避けるため、リューズガードで両サイドを、クラウンシステムで直上をガードする機構です。
BALLではエンジニアハイドロカーボンに搭載されています。


【ねじ込みリューズ】
気密性の向上を促す構造。
リューズをネジのように回転させながら閉めることで、防水性を向上させるアイデア機構。
多くの時計に採用され、特に200M防水が必須のダイバーズウォッチに多いですが、ボールウォッチでは全モデル標準装備となっています。

メンテナンスと費用

近年の舶来時計は価格の高騰化が進んでおり、それに伴いメンテナンス費用も高額になりつつあります。
名の知れたブランドであれは、OH費用で5~15万円という額はザラになり、パーツ交換を有する場合30万円することもあります。

一方、ボールウォッチのメンテナンス費用は…
シンプルな三針モデルで¥20,000
GMT等の多機能モデルで¥25,000
複雑構造のクロノグラフで¥30,000
ボールウォッチの公式OH料金表が上記のようになりますので、舶来メーカーとしては大変リーズナブルな価格でアフターサービスを行っています。

2019年12月の段階でこの価格ですが、多少の前後を想定してもクロノメーター取得の舶来時計で5万円未満というのは相当リーズナブルです。
※価格はメンバー登録の金額です。

ブランドと知名度

ボールウォッチは、時計の本場であるスイス・ラ・ショー・ド・フォンに本社を構えており、創業より130年の歴史を持つしっかりとしたブランドです。
現在ではムーブメントを自社開発するなどその技術力を示し、ミニマルなモデルを展開しつつも、そのすべてが耐衝撃時計というのは高い評価点に思えます。

芸能人や俳優など、著名人にも着用されたことのあるボールウォッチですが、多くは刑事ドラマやロックバンドなど、激しいアクションが求められる作品に登場しています。
一番有名なのはドラマ「相棒」でしょうか。

一方、日本に上陸して日の浅いブランドであるため、国内での知名度はあまり高くないのが現状であり、繊細かつ緻密な機械式時計でありながらタフネスを追求するそのコンセプトは、少なからずデザインにも影響するため、好みが出るでしょう。

おすすめされる理由

ボールウォッチは初心者におすすめされる傾向が強い時計であるといえます。
主な要素がこちら。

①リーズナブルな価格展開
本来、クロノメーター取得のスイス自動巻きメカニカルともなれば、50~80万円前後はする中、ボールウォッチは10万円代から展開がなされており、平均して25万円前後から一生モノの時計をそろえることができるのです。

②継続的に維持しやすい
本来、機械式腕時計のメリットとはメンテナンスを前提に長期にわたって使用できることにあります。
あまりメンテナンス費用が高額では維持が困難になり、お子様へ譲ろうにも「負担になるのでは」っと気を使ってしまいます。
ボールウォッチのメンテナンス費用は舶来時計として破格ではありますが、何より自身のおかれる環境が変化しても負担にならない点は大きなメリットと言えます。

③丈夫な造り
耐衝撃性・耐磁性・防水性・高精度・高精度を維持するための特許技術の数々と、ハードな使い方ができる時計なだけに万一のリスク少なく使い続けることができるのは重要なポイントと言えるでしょう。
まさに、機械式時計のGショックです。

まとめ

ボールウォッチの魅力は、「衝撃・磁気・水に対し丈夫な造りとお墨付きの高精度を備えたスイスの本格メカニカルウォッチでありながら、良心的なアフターメンテナンスコストパフォーマンスにとんだ価格展開がなされているから、と言えるでしょう。
上記のようなメリットであれば初心者に限らず、玄人やコレクターにとっても魅力的だと思います。
尚、正規保証は最長5年と国内メーカーに比べれば長く、舶来ブランドとしては一般的といった内容です。

一方、腕時計に高いステータスを求める方の場合、国内知名度があまり高くないボールのネームバリューに物足りなさを感じてしまうかもしれません。
昨今は316Lから904Lなど、より質の高いステンレスに切り替えている傾向があり、更なる躍進を遂げている印象です。
知名度は今後に期待といったところでしょうか。

年齢相応に長く使える良い時計が欲しい、でも無理はしたくない!そんな方には十二分お勧めできるタフなブランドでした。


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