【ヤマトヤ御殿場本店】時計の代表的な材料「ステンレス」について書いてみました。

2020.08.25

前回「チタン」について書いたので、今回は腕時計の代表的な材料「ステンレス」について書いてみることにしました。

面倒くさい長文です。最後までお付き合いくださいm(__)m 画像がないので、十数年で撮り溜まった本文とは全く関係ない釣行時の写真を載せながら書いてみることにします。

時計の素材には、ステンレススチールが主として使われていますが、一口でステンレススチール(SS)といっても、その種類は1000位存在するのだそうです。

SS(ステンレススチール)の一番の特徴は、錆びにくいということなのですが、その種類によって、錆びにくさや、丈夫さに差があります。鉄にクロムを混ぜることで錆が起こりにくくなり、もっとも安価なステンレスになります。これにニッケルを加えると、海水や硫酸などでも腐食しにくくなると同時に、粘り気が出て破壊されにくくなります、さらに磁気にも強くなります。

このニッケルが入ったSSで、最も有名なモノが、「304」と呼ばれ、キッチンのシンクや厨房の素材として多く使われています。(「304」=鉄:約73%、クロム:18%、ニッケル:8%、炭素:0.06%)

 この「304」にモリブデンという物質を加えると、より錆が出にくい「316」になります。この「316」だけでも、充分優れたステンレススチールなのですが、溶接を行った周辺などで起こる腐食にも強くするために、炭素の比率を0.03%に抑えた「316L」というステンレスがあるのですが、これが現在腕時計の材料として有名なステンレスです。ちなみに、316Lの「L」は「Low Carbon(ローカーボン)」の意味です。(「316L」=鉄が67%、クロム:18%、ニッケル:12%、モリブデン:2.5%、炭素:0.03%)

ステンンレス(Stainless Steel)は、「炭素が1.2%以下、クロムを10.5%以上含む特殊鋼」と定義されているようですが、一言で言うと「鉄にクロムを加えた合金」です。

 ところで、錆びるって何なのでしょう? 最も有名な金属である「鉄(Fe)」を例として説明します。鉄鉱石(鉄の原料)は、自然界では鉄と酸素の酸化物として存在しています。この鉄鉱石から酸素を取り除いて作られたモノが鉄なのですが、空気中の湿度や温度によって元の酸化物に戻ろうとします。この酸化物が錆と呼ばれるものの正体です。

(純粋な鉄を放置しておくと必ず錆びてしまうということはありません。錆びるには酸素と水の両方が必要なので、鉄を「超乾燥した空気中」や「純水中(酸素を取り除いた水)」に浸しても、鉄片は錆びない!…と書いてありました。)

ここで、なぜ鉄にクロムを加えるとさびにくくなるのかを説明しましょう。
クロムは、ステンレスの表面を覆う皮膜を形成します。この皮膜はとても薄く緻密で、ステンレス自身を錆の原因となる酸素等から守るバリアーとなります。ステンレスの表面の長期間光沢が失われないのは、このバリアーのおかげです。

ステンレスの最大の特長である“さびにくい”性質は、クロムによって作られる表面のバリアーのおかげなのです。そのバリアーは「不動態皮膜」と呼ばれています。

 ステンレスの表面をキレイに保つのは、クロムが作り出す不動態皮膜だということはお分かりいただけたかと思います。実は、クロム以外にもステンレスの耐食性を高めるモノがあります。
その正体はモリブデン! クロムのバリアーは、衝撃等によりキズが付いたり、塩素により破られても普通は瞬時に修復されますが、強い攻撃を繰り返し受けた場合には、クロムによる修復が間に合わない場合があります。ここで、モリブデンがステンレスの中に含まれていれば、皮膜が破られた周辺のクロムにより早い修復を働きかけます。この場合はクロムあってのモリブデンですが、モリブデンの錆に対する抑制効果はクロムの約3倍あると言われているそうです。こう聞くと先に説明した「316L」というステンレスがいかに優れた材料かということが分かります。またこの優れた性質が、腕時計のケース・ブレスの材料として使われる理由でもあります。

 最後に、ステンレスには、クロムに加えニッケルを含む種類が多く有るのですが、なぜアレルギーを起こしやすいニッケルを混ぜ込むのでしょうか?ニッケルには錆の発生そのものを抑える効果はあまりありません。でも、錆びてしまった場合、錆の進行を遅らせる働きがあるのです。これがステンレスにニッケルを混ぜる理由なのです。

・・・なので、日本の時計メーカーは、ステンレスの表面に独自のコーティングを施すことによって、アレルギーを起こしにくいように工夫しています。

今回は時計の紹介無しで書いてみました。チタンとステンレス…計2回で簡単な説明を書いてみましたが、何となく分かっていただけたでしょうか?・・・関係ない写真に加え、浅くちょっと広めの内容の長文にお付き合い下さいまして有難うございました。

店舗案内STORE LIST